3つのパスワードは守っているものが違う
iPhoneのパスコードは、そのiPhone本体を守ります。Apple Accountのパスワードは、iCloudや購入履歴を含むアカウント全体を守ります。Macのログインパスワードは、そのMacの中のユーザーアカウントを守ります。どれも「パスワード」に見えますが、保存されている場所も、効く範囲も違います。
本記事の項目名と手順は、執筆時点のiOS 26とmacOS Tahoe 26にもとづいています。ほかのバージョンでは表記が異なる場合があります。なお、Apple Accountは2024年まで「Apple ID」と呼ばれていたものと同じです。
| 種類 | 守るもの | 主に入力を求められる場面 | 保存場所 |
|---|---|---|---|
| iPhoneのパスコード | iPhone本体と中のデータ | ロック解除、再起動後、データ移行 | そのiPhoneの中だけ |
| Apple Accountのパスワード | iCloud、購入、「探す」 | 新しい端末でのサインイン、購入、アクティベーションロックの解除 | Appleのサーバー |
| Macのログインパスワード | Macのユーザーアカウント、FileVault、キーチェーン | 起動時、アプリのインストール、設定の変更 | そのMacの中だけ |
iPhoneのパスコードは本体のロックとデータ暗号化の鍵
パスコードは、iPhoneのロックを解除するための数字(英数字も設定可)です。iPhone内のデータは暗号化されていて、パスコードはそれを解読する鍵の一部として使われます。つまり単なる画面ロックではありません。パスコードはAppleのサーバーに送られないため、Appleにも調べられません。
Face IDやTouch IDを設定していても、パスコードが必要になる場面があります。代表的なのは、再起動の直後、48時間以上ロックを解除していないとき、Face IDの認証に何度も失敗したときです。ふだん顔認証で済ませていると、再起動のあとで番号を思い出せなくなることがよくあります。
ほかの端末で入力を求められることもあります。クイックスタートで新しいiPhoneにデータを移すときは、新しいiPhoneの画面で古いiPhoneのパスコードを入力します。新しい端末でApple Accountにサインインしたときに、手持ちのiPhoneのパスコードを求められる場合もあります。これは、iCloudキーチェーン(保存したパスワードを端末間で同期する機能)のように、エンドツーエンドで暗号化されたデータを読み出すための確認です。
Apple Accountのパスワードはアカウント全体を守る
Apple Accountのパスワードは、Appleのサーバーで管理されているアカウントの鍵です。iPhone、iPad、Macを1つのアカウントでつなぎ、iCloudの写真やメモ、App Storeでの購入、「探す」、支払い情報をまとめて管理します。
このパスワードが求められるのは、新しい端末やWebブラウザでのサインイン、App Storeでの購入、「探す」をオフにするとき、アクティベーションロックの解除などです。購入時の確認はFace IDやTouch IDで済ませることもできます。ただし、設定を変えた直後などはパスワードを求められます。購入時の確認方法は「設定」>[自分の名前]>「メディアと購入」>「パスワードの設定」で変更できます。
2ファクタ認証を使っている場合、新しい端末でサインインすると、信頼できるデバイスに6桁の確認コードが届きます。確認コードは毎回変わる使い捨ての番号で、パスワードとは別のものです。
パスコードだけでApple Accountのパスワードを変更できる
サインイン済みのiPhoneでは、「設定」>[自分の名前]>「サインインとセキュリティ」>「パスワードを変更」から、iPhoneのパスコードを入力するだけでApple Accountのパスワードを変更できます。自分がパスワードを忘れたときは便利です。しかし、盗み見でパスコードを知った人物がiPhoneを盗めば、アカウントを乗っ取れてしまうことにもなります。
盗難デバイスの保護はパスコードだけでは操作できないようにする
この弱点を補うのが、iOS 17.3で追加された「盗難デバイスの保護」です。オンにすると、自宅や職場のような慣れた場所から離れているときは、一部の操作でパスコードが使えなくなり、Face IDかTouch IDが必須になります。保存したパスワードの表示や、すべてのコンテンツと設定の消去がこれに当たります。
Apple Accountのパスワード変更、パスコードの変更、「探す」をオフにする操作には、さらに1時間の「セキュリティ遅延」がかかります。生体認証のあと1時間待ってから、もう一度生体認証を通さなければなりません。パスコードを知られていても、持ち主の顔や指がなければすぐにはアカウントを変えられないということです。設定は「設定」>「Face IDとパスコード」>「盗難デバイスの保護」にあります。場所に関係なく、常に遅延をかける設定も選べます。
Macのログインパスワードはそのユーザーを守る
Macのログインパスワードは、Mac内のユーザーアカウントに設定するパスワードです。Macの初期設定では、Apple Accountへのサインインとユーザーアカウントの作成が続けて行われます。そのため2つを混同しがちですが、別々のものです。
ログインパスワードは、起動時やスリープ解除時のログインだけに使うものではありません。アプリのインストールやシステム設定の変更で管理者の承認が必要なときにも使います。FileVault(ディスク全体を暗号化する機能)がオンのMacでは、再起動後の最初のロック解除にも必要です。この場面はTouch IDでは代用できません。キーチェーン(Macにパスワードを保存する仕組み)のログイン用の保管庫も、通常はログインパスワードで開きます。
移行アシスタントで古いMacからユーザーアカウントを移すと、そのアカウントは古いMacのログインパスワードを引き継ぎます。新しいMacの初期設定で作ったパスワードではログインできないので注意してください。
忘れたときに起きることと取り戻し方
iPhoneのパスコードを忘れた場合
入力を間違えるたびに待ち時間が延び、最後は「iPhoneは使用できません」などと表示されて入力できなくなります。iOS 17以降は、パスコードを変えてから72時間以内なら、以前のパスコードを使って新しいパスコードを設定し直せます。それ以外の場合は、iPhoneを消去するしかありません。ロック画面の「パスコードをお忘れですか?」からApple Accountのパスワードを入力して消去するか、コンピュータにつないでリカバリーモードで復元します。
消去すると本体のデータは失われます。取り戻せるのは、iCloudやコンピュータにバックアップしてあった分だけです。消去後の初期設定ではアクティベーションロックがかかるため、Apple Accountのパスワードが必要になります。パスコードとApple Accountのパスワードを両方忘れると、復旧はかなり難しくなります。
Apple Accountのパスワードを忘れた場合
サインイン済みのiPhoneやMacがあれば、そのパスコードやログインパスワードを使って新しいパスワードを設定できます。手元に端末がない場合は、家族の端末の「Appleサポート」アプリか、iforgot.apple.comからリセットします。
どの確認手段も使えなければ、「アカウントの復旧」を申請します。本人確認のため、数日以上待つことがあります。あらかじめ「復旧用連絡先」(確認コードを出してくれる信頼できる相手)を登録しておけば、待たずに済みます。「復旧キー」を設定している場合は、復旧キーか信頼できるデバイスがないとアカウントに戻れません。アカウントの復旧も使えなくなります。
アクティベーションロックを解除できない場合
アクティベーションロックは、「探す」がオンの端末を消去したとき、持ち主のApple Accountのパスワードがなければ再び使えないようにする仕組みです。盗難対策としては有効ですが、中古で買った端末や家族から譲り受けた端末で問題になりがちです。iPhoneでは、端末の以前のパスコードで解除する選択肢が表示される場合もあります。どちらもわからない場合は、レシートなどの購入証明を用意してAppleに解除を依頼します。
Macのログインパスワードを忘れた場合
ログイン画面で何度か間違えると、リセット方法が案内されます。設定によって、Apple Accountを使う方法とFileVaultの復旧キーを使う方法があります。別の管理者アカウントがあれば、そこから変更することもできます。ただし、この方法でリセットすると、ログイン用キーチェーンは古いパスワードのまま残ります。そのため、保存していたWi-Fiやアプリのパスワードを読み出せなくなることがあります。iCloudキーチェーンで同期していた項目は、iCloudから戻ります。
入力画面で迷ったときの見分け方と今やっておくこと
何のロックを外そうとしているかで判断します。目の前の端末のロックなら、パスコードかMacのログインパスワードです。iCloud、購入、新しい端末でのサインイン、アクティベーションロックなら、Apple Accountのパスワードです。画面に「Apple Account」と表示されていれば後者です。3つに同じ文字列を使い回すと、1つが漏れただけで全部が危険になります。
忘れる前に確認しておきたいのは次の3つです。1つ目は、盗難デバイスの保護がオンになっているか。2つ目は、「サインインとセキュリティ」に信頼できる電話番号と復旧用連絡先が登録されているか。3つ目は、MacのFileVault復旧キーの保管場所を把握しているかです。手順の詳細や最新の情報はAppleサポートで確認してください。